迷いの砂漠
(ナミビア ナミブ砂漠)
砂漠という世界を一度見てみたいと昔から思ってきました。
ナミブ砂漠に惹かれたのは、たまたま『あいのり』を見たせいかもしれません。
しかし、ケニアに何度も行くようになってもなお、ナミビアは月や深海と同じくらい遠く非現実的な場所でした。なにしろひとり100万円ですから。
ナミブ砂漠にしても、ウユニ塩湖にしても、南極にしても、行きたいと思う場所は決まって日本から離れたところにあります。けっして遠いところへ行きたいわけじゃない。飛行機のつらさを考えれば、むしろ遠いところなんか行きたくない。見たいものが、なぜかいつも遠くにあるのです。
結果、金がかかる。
結婚してからの10年ちょっとで旅に費やした総額は、今住んでいる家の値段とそれほど変わりません。
もちろん、好きなことをやってこられただけでも他の人より恵まれているわけだし、後悔はないけれど、これからもこれでいいのかという迷いは、いつも心のどこかにあります。迷いながら旅を続けています。
それでも、このデューン45を登っているときは迷いはありませんでした。
下から見ているぶんにはたいしたことなさそうだけど、登り始めるとけっこう高さや斜度を感じるし、とにかく風が強かったので、吹き飛ばされたり転んだりしたら最後、そのまま落ちて死ぬんじゃないか――そんな恐怖でいっぱいでした。よけいなことを考えているゆとりなんてなかった。
じっさいは、飛ぼうが転ぼうが落ちようが(そもそも落ちない)ぜんぜんだいじょうぶなんですけどね。