さらばブラザー
(2004 ケニア/マサイマラ動物保護区)
最初に見かけたとき、2頭の兄弟ライオンは、仲良くつるんで歩いていました。
若くともそこはオス。サバンナの風神・雷神、オロロロ・ゲートの阿吽、いや、ライオン界の亀田兄弟とよぶべきか――ともかく貫禄じゅうぶんで、彼らが歩を進めるごとに、周辺の動物たちは凍りつきます。
次に見かけたとき、片方は1頭のメスライオンをつれていました。もう片方は、すこし離れてあとをついていきました。
最後に見かけたとき、兄弟は牙を交えました。
時間にすれば、ものの10秒ほどでしょうか。勝負はあっけなく終わりました。
勝者はふたたびメスをしたがえて歩き出し、敗者は、ヌーの死骸に群がっていたハゲワシをけちらすと、その肉を横取りしたのでした。ヤケ食いでしょうか。
かくして風神・雷神コンビは、あいだに割りこんだ女神の毒によって袂を分かったのです。