家族の呼び声
(2012 ケニア/マサイマラ動物保護区)
ヌーやシマウマの川渡りを見るには、第一に運、第二に辛抱。
川岸には群れがあふれんばかりにふくれあがって、今にも渡りそうな雰囲気なのに、どっこい、ここからが長い。
群れはさざ波のように寄せたり引いたりをくり返しながら時間とともに膨張しますが、誰かが口火を切らないかぎり(たいてい、引き金はシマウマです)始まりません。
見ているこちらも、炎天下で(川渡りが始まるのは、水温が上がる真昼時なので)、そのときをひたすら待ち続けます。時間つぶしの本と、団扇があると重宝するでしょう。ただし、運が悪ければ、そのまま空振りに終わることも。
反対側の岸に数頭のシマウマがやってきて、群れに向かい、しきりに鳴きはじめました。どうやら、前日に渡ったものが残った家族を呼んでいるようです。
それでも、群れに大きな動きはありません。
すると、驚くことが起きました。このままではらちがあかないと考えたのか、なんと、迎えにきたシマウマたちが川に飛び込んだのです。
前日、決死の思いで渡った川を、彼らは危険もかえりみず、家族のために戻ったのでした。
その勇気に触発されたか、いつもならシマウマのあとに続いて渡り始めるおくびょうなヌーが、この日は先陣を切りました。
いよいよ、ショータイムの始まりです。